異食
認知症について少しづつ調べ始めたころ、「異食」と言うことばを知ったが、私の母のそれを見る日がくるとは思ってなかった。
その日曜日はなんだか変だった。何が変かわからないんだけど、何か変だなと思った。
お昼ころ、〇〇茶舗へ行った。私はそこの抹茶ソフトやゼリーが好きで、以前は子供たちとよくお茶しに行った。
母と二人で時々立ち寄る。店内は満員てことはほとんどなくて(失礼でごめんなさい)ゆっくり静かな気持ちになれる。いつもの地下席が使えず、お店の奥の席に座る。
地下の席に座ると、「私ここに前も来たことがある」と言うのが常だけど、その日は言わなかった。
わりと厚手のふかふかのおしぼりの袋を破り、そのままパクリと頬張った。バナナを食べるみたいに。慌てて私が止めたので、ひと噛みで終わった。
次の日の朝、母の部屋に朝食を運んだ。いつもなら15分あれば、食べ終わって食器を下げてくる。覗いてみると、食事を食べ終わったその箸で、ニベアクリーム(缶)をすくって食べていた。口角にべっとりニベアが~~~
それ食べたの?なんで?「だったらここに置かないでよ!!あんたがここに置いたんじゃないの?」と逆ギレされた。私は置いてないけど...言葉づかいも恐ろしい。怒るとあんた呼ばわりされる。
でも仕方ない。
以降、朝どんなに時間がなくても朝食は一緒の部屋で食べ、ニベアは撤収した。
歯磨き粉は顔に塗ることがあるから、ずっと前に撤収した。
お出かけの必須アイテム
真面目な母は毎朝自分で準備、確認を怠らない。
1.めがね
2.ボールペン
3.帽子
この三つは必須アイテムで、鞄に入れては出し、出しては入れを本当に繰り返す。
永遠に出かけられないのでは?と思う。
時間になって声をかけると「はーい」といい返事をしてくれる。
車に乗ってからも確認。
そして
母「眼鏡がない」私「鞄に入ってると思うよ」
母「ペンがないんだけど」私「鞄の中のペンケースに入ってると思うよ」
母「チッ」私「どうかした?」母「帽子忘れた」
の会話を運転席とその斜め後ろの席で繰り返す。
15分でデイサービスに着く。
母も必須アイテムの事を忘れられるし、私は心底ホッとする瞬間である。
孫娘との関係
当時JKの孫娘が我が家で暮らしていた時。
母はしばしば、孫娘に久しぶりに会ったかのように「まあ、綺麗になって。背も大きくなって。何センチになった?」と同じセリフで話しかけていた。
孫娘専用のグッズをこっそり?使ってしまう。
ジャンプーや歯磨き粉、生理用ナプキン。私の物を共用すればいいのに、、、若い子が好きな綺麗な色やデザインの物が好きみたい。
綺麗な色の物だけじゃなく、孫娘のお気に入りのブラックのトレーナーを着ていたこともある。でも「私もこの色の服持ってるんだから」の返事。なるほど。
メガネ。「ねえ。〇〇ちゃんに私のメガネを返してと言って!!」と何度も私に言ってくる。休日メガネで過ごす近眼の〇〇ちゃんの顔をじろじろ見ていたこともある。
JKのミニスカートさんが、わざわざご老人のメガネを使うわけないじゃんか!
いえ、JKでなくても、人のメガネなんてなかなか使わないよ。
結局、孫娘は、共用スペースに、むやみに私物を置かないことにした。
孫娘が大学進学でこの家を離れることで、孫娘に自分の物を取られるという妄想は、自然と落ち着いた。そして、「今夜は〇〇ちゃんいないんだね、静かだねえ。」とまるで同居しているかのように言う時がある。
口癖?
約束を忘れた時「約束したじゃない!」
物を失くした時「どこにある?」
知人とおしゃべりした後「今の人誰?」
返事は「知らんよー」
朝、布団の中からバナナの皮が出てきて「食べたの?」と聞いても返事は「知らんよー」
最初は口癖だと思った。
ほんとに知らないなんて思わなかった。
トイレ問題 その1
母と暮らしていて1番悩ましい事が、トイレの問題。おしもの事。
3年前に、「おまたあて」なるものを持っている事を知った!ハンドタオルだったり、フェイスタオルを切ったものだったりする。
使用済みのそれを部屋のあちこちで乾かそうとする。初めてそれの匂いを嗅いだ時は衝撃で、すぐ、処分した。そのうち、未使用のそれを母が、「わたしのおまたあて」と呼んでいて、また衝撃だった。
おまたあてをあてていても、ズボンや靴下まで、おしっこが滲みてしまうから、尿漏れパットを使ってもらうことにした。このパットをトイレに詰まらせると大惨事。水分を含んだパットが完全に蓋をしてしまい、流したいものが便器から溢れだす。これは、少なくとも4回はあった。業者が、お手製の道具で圧をかけて押し出してくれた他、家族が、便座を取り外して詰まった物を取り出してくれた。
パットは流すのに、トイレットペーパーはゴミ箱に捨てる習性は、一年くらいつづいた。
アルツハイマー型認知症の母
私の実母と、我が家で一緒に暮らし始めて2年半。私の尊敬する母は、アルツハイマー型認知症。77歳。発症したのは、10年ほど前ではないかと思われる。
母はとにかく働き者。家庭でも職場でも。明るくて優しくて掃除好き...一方、真面目で、気が強い。またプライドも高い!
走るのが早くて、スポーツ万能でスタイルもまあまあじゃなかったかな?綺麗な字を書いていた。今も自分の名前は上手。渡したメモ帳のすべてのページに自分のフルネームを練習帳の如く書いてある。
そう思い返してみると、私は顔は母に良く似てるかもしれないけど、体格は父親に似ている。とにかく小柄だし、父の兄弟たちと同じく、50歳の私は膝が悪い。
私は母ほど朝から晩まで365日動き回れないし、そうしようとは思っていない。性格はどうだろ...似ていない方がよさそうな事もたくさんあるけど、どうかな...
2019.2.28。一緒に美容院に行った時、二人とも綺麗になって、さあ家に帰りましょうとなった時、「私の娘はどこに行ったのかな?」私はここだよ、私が〇〇だよ、と名前を言うと、私の目を見て、「私の娘と同じ名前」と関心してた。
ほんとにこういう事があるんだね。そうゆう病気なんだね。
さっきお風呂上がりも混乱してたね。私の事が誰だかわからないって瞬間が、私の知る限り2回になりました。
母自身疲れるだろうな...居場所や、一緒にいる人が誰なのかわからないなんて、不安だろうな...母がどうか朝まで、眠れますように。目が覚めても不安で庭に出ていかないでね。